いま、緑のままの自然を残して、その隙間に人工的な建造物をつくることが課題になっている。里山のひとつの沢にセラミックのメッセとセラミックの美術館とを同時に挿入するというプログラムがここで組みたてられた。とりかこむ尾根をそのまま残すこと。それが周辺の自然の雰囲気を残す最良の方法で、これは秋吉台国立芸術村(1998年)の計画の際の原則にされた。ここでは尾根を残すためにアプローチでパーキングからまず橋をつくって、自生するシデコブシのうえを越し、ついで尾根に掘られたトンネルを介してはじめて目的の玄関、というよりもテラスに到達する。そのテラスは空中に設けられた広場である。野外の催しなどをここに予定している。エントランスホールを降りていくとセラミック・ミュージアムのレベルに到達する。この部分は、より大きい架構体から、全面的に吊られている。約5メートルの吊られた構造体は完全な免震構造となる。すなわち、地震の振動周期と、この吊られた構造の周期が異なるため、本体の架構が大きくゆれても、ここでは、定点を保持している。この想定されていた原理が今回の意図的に適用されたが、何よりも展示されている物体が壊れやすいセラミックであるため充分に正当化される理由が生まれた。勿論、今日建物全体ゴムパッキングにのせる免震対策がなされているのが普通だが、ここでは吊られた部分だけを免震すればいい。重要なセラミックの展示だけの部分の部分免震である。
メッセの主体構造は野外テラスとメッセレベルの床でひとまわり大きい骨組みで支持されている。そのなかに軽く吊られたミュージアムが挿入されていることになる。沢に人工的な床面を架け渡すために、沢を庭園化することが可能である。回遊路をもった池、ここから流れる水のカスケードなど。この池もまわりに、集会室、茶室、レストラン等を配する。もうひとつの沢には一般の人々の参加する陶芸のワークショップ棟がある。
周辺が丘で囲われ、その一方のみが外部へひらいているような地形であるため、建物のファサードはひとつの面(道路側)のみである。そして、この内部にはいると、あらゆる視線は外を囲まれているために、内部に向かわざるを得ない。京都などの、町屋が内側に開いて庭を内部にとりこむ(坪庭)のと同様に、スケールは、はるかに大きいが、視線を内部にむけ、ここに内的な独自な世界をつくりあげようとしている。
磯崎 新
岐阜にある美術館セラミックパークMINOは、美濃焼を介して人と人が交流することの出来る施設です。尾根をそのまま残すことが周辺の自然の雰囲気を残す最良の方法であるという考えのもと、設立致しました。尾根をそのまま残し、その隙間に人工的な建物を建てるというのは、決して簡単なことではありませんでした。
しかし、岐阜の豊かな自然に囲まれた施設を建てることにこだわった結果、人々が自然と集い、気持ち良く過ごすことの出来る空間となっております。美術館の他、陶芸体験・自然体験を開催出来る各種イベント・展示スペースを備えております。岐阜の観光スポットとして、ぜひご利用ください。